楊先生の漢詩朗読(その29. 杜甫の「月夜憶舎弟」)
皆様、こんにちは!スマイル中国語の楊 欣然です。
今日は杜甫の『月夜憶舎弟』を中国語で味わってみたいと思います。
月夜憶舎弟 杜甫
戍鼓斷人行 邊秋一雁聲
露從今夜白 月是故郷明
有弟皆分散 無家問死生
寄書長不達 況乃未休兵
(書き下し文)
月夜に舎弟を憶ふ 杜甫
戍鼓 人行断え 辺秋 一雁の声
露は今夜より白く 月は是れ故郷に明かるからん
弟有れども皆分散し 家の死生を問ふべき無し
書を寄するも長く達せず 況んや乃ち兵を休めざるをや
(現代語訳)
番兵らが打ち鳴らす鼓の音がきこえているが人通りは途絶えている。
国境の辺地の秋にあって一羽飛ぶ雁の声が聞こえる。
今、秦州での夜ははじめて明るい夜で白露の時節になる。
ここの月の光は故えのある郷と同じような明るさでさえているだろう。
弟はいてもみなあちらこちらと散らばって居り、
その死んだか生きているかを尋ぬべき親族の家さえも無い状態だ。
手紙を寄せてやるのだがいつまでも届かないのだ、彼らの安否が気にかかる。
いやそればかりでない、いまだ天下にひろがる騒乱がやまないのである。
(解説)
759年秋、杜甫48歳、官職を捨て、家族と共に漂白の生活を始めた頃の作品です。
杜甫の実母は幼少で亡くなったため、異母弟ではありますが、4人の弟がいました。杜甫と行動を共にしていたのは弟の杜占だけで、残りの3人は遠方にいたようです。安史の乱で洛陽が占領され、交通は分断されていたので、杜甫のいた秦州から連絡を取ることはできず、弟たちの安否を心配しています。
またこの年の暮れに成都にたどり着くのですが、この年齢で職も家も名も捨てねばならなかった彼の目には、秋の露は重く悲しかったろうと思われますね。秋の夜にしみじみとくる漢詩でした。