楊先生の漢詩朗読(その8 杜甫の「春望」)

スマイル中国語教室

楊先生の漢詩朗読(その8 杜甫の「春望」)

こんにちは!スマイル中国語教室の楊 欣然です。

 

 今日は日本人にもお馴染みの中国の詩人、杜甫が詠んだ漢詩を中国語で味わってみたいと思います。

 

楊先生の「春望」の朗読はこちらから

 


(西安の大雁塔から見た現在の西安。かつて唐の都でした。安史の乱では焼け野原となりました。)

 


(玄奘三蔵とゆかりの深い西安の大雁塔です。)

 

春望 杜甫

 

国破山河在

 

城春草木深

 

感時花濺涙

 

恨別鳥驚心

 

烽火連三月

 

家書抵萬金

 

白頭掻更短

 

渾欲不勝簪

 

(解説)

 

国破山河在

 

(白文読み)国破れて山河在り

 

(現代語訳)国都長安は破壊され、ただ山と河ばかりになってしまった。

 

城春草木深

 

(白文読み)城春にして草木深し

 

(現代語訳)春が来て城郭の内には草木がぼうぼうと生い茂っている。

 

感時花濺涙   

 

(白文読み)時に感じては花にも涙を濺ぎ

 

(現代語訳)この乱れた時代を思うと花を見ても涙が出てくる。

 

恨別鳥驚心

 

(白文読み)別れを恨んでは鳥にも心を驚かす。

 

(現代語訳)家族と別れた悲しみに、鳥の声を聞いても心が痛む。

 

烽火連三月

 

(白文読み)烽火三月に連なり。

 

(現代語訳)戦乱は長期間にわたって続き、

 

家書抵萬金

 

(白文読み)家書萬金に抵る

 

(現代語訳)家族からの便りは滅多に届かないため、万金に値するほど尊く思える。

 

白頭掻更短

 

(白文読み)白頭掻かけば更に短く

 

(現代語訳)白髪頭をかくと心労のため髪が短くなっており、

 

渾欲不勝簪

 

(白文読み)渾べて簪に勝えざらんと欲す

 

(現代語訳)冠をとめるかんざしが結べないほどだ。

 


(西安の華清池にある楊貴妃像。華清池は唐の玄宗皇帝と楊貴妃が過ごした温泉地です。因みに華清池は張学良が蒋介石を監禁した西安事変の場所でもあります。)

 


(楊貴妃が入浴していたとされる浴槽です。)

 

 杜甫は7歳で詩を作り、9歳で書道を学び始めたほどの秀才でしたが、20代、30代を通して各地で任官活動をするも、仕事が決まらず、生活は苦しいものでした。44歳の時、ようやく長安の近衛軍の武具を管理する下級の役職につきました。

 

 しかしようやく役職に就き、家族が養えると安心したのもつかの間。節度使(軍の司令官)である安禄山と史思明が、朝廷に反旗を翻したのです。この乱の原因は皇帝・玄宗の恩寵を受けていた安禄山と、玄宗の愛妃である楊貴妃とその一族の対立が背景にありました。

 

 反乱軍が長安に迫ると、玄宗皇帝は楊貴妃一族を引き連れ、四川へ難をのがれます。逃亡した玄宗にかわって、玄宗の第三子粛宗が即位します。杜甫は国を思い、反乱軍と戦おうと粛宗のもとに駆けつける途上、杜甫は反乱軍にとらえられ、長安に連行されます。

 

 1年間にわたる捕虜生活のさなか、ある日杜甫は長安郊外の丘に登り、長安の町を見下ろします。

 

 「これがあの美しかった長安の都か。それが今や、こんなにも荒れ果てて、焼け野原になって…」

 

 この戦乱に巻き込まれた杜甫は荒廃した都を見て、嘆き悲しみ、その様子を一節の詩に残したのが「春望」です。

 

 激動の世の中と常に変わらぬ自然との対比。杜甫の限りない不安や焦りと家族への思いが感じ取れます。

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