楊先生の漢詩朗読(その17 豚肉が大好きな気持ちを抑えきれず詠んだ蘇軾の漢詩「食猪肉」)

スマイル中国語教室

楊先生の漢詩朗読(その17 豚肉が大好きな気持ちを抑えきれず詠んだ蘇軾の漢詩「食猪肉」)

こんにちは!スマイル中国語教室の楊 欣然です。

 

先週、杭州の政治家で文人でもあり、西湖の環境整備に多大な貢献をして杭州市民に親しまれている蘇軾について紹介させていただきました。

 

 

彼は大の豚肉好きとして知られており、考案した豚肉料理は彼の号である"蘇東坡"から"東坡肉"と名付けられ、杭州名物となっています。

 

 

今週はそんな豚肉が大好きな気持ちを抑えきれず詠んだ漢詩「食猪肉」を中国語で味わってみたいと思います。ちなみに中国語の「猪」は日本語の豚を意味します。

 

漢詩「食猪肉」の朗読はこちらから

 

 

食猪肉 蘇軾

 

黄州好猪肉    
價賤等糞土    
富者不肯喫
貧者不解煮    
慢著火 少著水 
火候足時他自美  
毎日起来打一碗  
飽得自家君莫管 

 

 

(解説)

 

「食猪肉」 蘇軾

 

(白文読み)猪肉を食す

 

黄州好猪肉

 

(白文読み)黄州猪肉好し

 

(現代語訳)黄州には美味しい豚肉がありますが、

 

價賤等糞土

 

(白文読み)価賎にして糞土に等し

 

(現代語訳)値段はゴミ・泥のように安い。

 

富者不肯喫

 

(白文読み)富者はあえて喫(くら)わず

 

(現代語訳)お金持ちは食おうともせず、

 

貧者不解煮

 

(白文読み)貧者は煮るを解せず。

 

(現代語訳)貧乏人も煮て食う工夫がない。

 

慢著火 少著水 

 

(白文読み)慢に火を著し、少しく水を著さば、

 

(現代語訳)ゆっくり火にかけ、水は少しだけにして煮てごらん。

 

火候足時他自美  

 

(白文読み)火候足るの時 他(かれ)自ずから美ならん。

 

(現代語訳)十分な時間じっくりと火がとおれば、それはおのずと旨くなる。

 

毎日起来打一碗  

 

(白文読み)毎日起来して一?(わん)を打ち

 

(現代語訳)毎日毎日(美味いし、安いから)一碗づつ食べ続け、

 

飽得自家君莫管

 

(白文読み)自家を飽得するも君管するなかれ。

 

(現代語訳)(ぶたのようなわしは)自分を食べたみたいに腹いっぱいになっているが、おまえさん、気にしなくていいよ。

 

蘇軾は自身の政治信念に忠実であったことから、権力者に疎まれ、何度も左遷されています。晩年は海南島に左遷されて、許されて都に戻る途中で亡くなりました。そういう意味では悲運の人だったとも言えます。

 

 

この漢詩は彼が杭州赴任前に黄州(湖北省)へ左遷されていた頃に詠んだものです。

 

昔の中国で肉と言えば羊でした。豚肉は下等な肉とされていたようです。

 

黄州時代の蘇軾は貧困生活のどん底で泥のように安い豚肉を料理して飢えを凌いでいました。

 

 

この漢詩にある「とろ火にかけて少しの水で煮込めば、やがて火が通っておいしくできる」と記述したように脂っこくなく、やわらかい豚肉料理を当時から作っていたようです。

 

杭州知事に赴任し、西湖の築堤工事の人々に豚肉料理を振舞ったところ、そのあまりのおいしさが大絶賛されたことで、人々は蘇軾の豚料理を彼の号である"蘇東坡"からとって"東坡肉"と名付けたようです。以降、東坡肉は杭州の名物料理となり、現在でもその美味しさが絶賛され続けています。

 

 

他にも鯉の揚げ煮や多くの中華スープを作っており、彼は相当な食いしん坊の美食家であると共に料理人であったようです。

 

 

蘇軾の文章は力強く、またユーモアにあふれ、とても悲運にもてあそばれた人物とは思えません。黄州での流刑時代に見つけた豚肉料理からは流刑ライフ、悪くない!と彼からの声が聞こえてきそうです。精神力が強く、自分の運命を客観的に見る能力が備わっていたんでしょうね。

 

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