楊先生の漢詩朗読(その10 李 白の「黄鶴楼送孟浩然之広陵」)
(武漢にある黄鶴楼。怒るように屋根の縁が天に向かっているようです。)
こんにちは!スマイル中国語教室の楊 欣然です。
今日は日本人にもお馴染みの中国の詩人、李白が詠んだ漢詩「黄鶴楼送孟浩然之広陵」を中国語で味わってみたいと思います。黄鶴楼は仙人伝説が残る武漢随一の名勝地であり、中国の『江南三大名楼』のひとつです。
(黄鶴楼の天守閣から見た長江。現在は武漢長江大橋がかかっています。)
「黄鶴楼送孟浩然之広陵」李白
故人西辞黄鶴楼
煙花三月下揚州
孤帆遠影碧空尽
唯見長江天際流
(黄鶴楼の天守閣から見た眺め。武漢市内が見渡せます。)
(黄鶴楼にある李白像。)
(解説)
故人西辞黄鶴楼
(白文読み)故人西の方、黄鶴楼を辞し
(現代語訳)昔からの友人(である孟浩然)が黄鶴楼に別れを告げようとしている。
煙花三月下揚州
(白文読み)煙花三月揚州に下る
(現代語訳)霞だって花が咲いているこの三月に揚州へと下っていくのだ。
孤帆遠影碧空尽
(白文読み)孤帆の遠影、碧空につき
(現代語訳)船の帆がだんだんと青空に吸い込まれるように小さくなってゆき、
唯見長江天際流
(白文読み)惟だ見る長江の天際に流るるを
(現代語訳)ただ長江が天の彼方に向かって流れているのが見えるだけになってしまった。
李白は12歳年上の孟浩然を詩業の先輩として尊敬していました。この漢詩には先輩に対するあたたかい気持ちがあふれています。
孟浩然が乗った舟を李白が黄鶴楼のほとりから見守っていると、舟がどんどん小さくなって、最後には水平線の彼方に消えてしまった、、。
孟浩然は生涯、科挙に合格することもなく、仕官して安定したこともありません。李白もまた、栄達とは無縁の生涯を送っています。この二人は、歳は離れていますが、境遇は似たもの同士だったのです。
長江のほとりに立つ黄鶴楼から舟で去る友を見送る李白。長さ5000キロを超える大河長江、限りなく広がる空、大自然の中に小舟が一艘。目を閉じると李白の旅立つ友への別離の思いもまた浮かんできそうです。
(黄鶴楼にある仙人伝説を描いたもの。黄鶴楼には、以下のような伝承が残っています。
昔、辛氏という人の酒屋があった。そこにみすぼらしい身なりをした仙人がやってきて、酒を飲ませて欲しいという。辛氏は嫌な顔一つせず、ただで酒を飲ませ、それが半年くらい続いた。 ある日、辛氏は辛氏に向かって「酒代が溜まっているが、金がない」と言った。仙人は代わりに店の壁にみかんの皮で黄色い鶴を描き、去っていった。 客が手拍子を打ち歌うと、それに合わせて壁の鶴が舞った。そのことが評判となって店が繁盛し、辛氏は巨万の富を築いた。
その後、再び店に仙人が現れ、笛を吹くと黄色い鶴が壁を抜け出してきた。仙人はその背にまたがり、白雲に乗って飛び去った。
辛氏はこれを記念して楼閣を築き、黄鶴楼と名付けたという。)
(黄鶴楼内部。鶴の絵が描かれた壺があります。)
(黄鶴楼7 黄鶴楼の庭園の池。)
(黄鶴楼の天守閣から見た武漢市内。黄鶴楼は何度も戦災などで建て直されています。この日は霧が出ていました。.)